うさぎの骨折・脱臼の原因・治療と予防

うさぎも人間や他の動物のように骨折や脱臼をします。むしろうさぎのほうが骨折や脱臼をしやすい動物なので、注意しなければなりません。

万が一うさぎが骨折・脱臼してしまったら、どんな症状で気づくことができるか、うさぎはどのようなことが原因で骨折・脱臼するのか、さらにはなぜうさぎは骨折・脱臼しやすい動物なのかについて、わかりやすく説明します。

次にうさぎが骨折・脱臼したと思われたら、飼い主はどのように対処すればよいか、病院での治療についてわかる範囲で解説しますので、参考にしてください。

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うさぎが骨折・脱臼したときの症状

うさぎの骨折が最も多いのは肢です。足の指も多いと思います。その理由は後程説明するとして、四肢が骨折した場合、一般的に次のような症状が見られます。

  1. うずくまる
  2. 肢をひきずって動く・歩く
  3. 肢を浮かして動く・歩く
  4. 食欲の低下
  5. 排泄物でおしり周りが汚れる

うずくまるのは痛みがあるからです。痛みのために、食欲も低下します。身体が自由に動かせないために、おしり周りが排泄物で汚れるでしょう。また、痛みのために骨折した肢や指を床につけることができず、浮かした状態になります。

人間が骨折したときと同じですね。うさぎも骨折すると痛いのです。食欲が低下するのも納得ですね。このような症状が見られ、骨折の可能性がある場合には、できるだけ早く動物病院を受診しましょう。

抱っこしていた時に暴れたり高いところから落ちたり、何かに驚いてパニックになり暴れたりなど、原因と思われる出来事がはっきりしている場合の他、飼い主が気が付かない間にケージの網やすのこに足を引っかけて骨折している可能性もあります。原因が見当たらない場合でも、疑わしい症状があれば動物病院へ行き、適切な処置を受けましょう。

うさぎはなぜ骨折・脱臼しやすいのか

うさぎの筋力はとても強い反面、骨は弱いと言われています。調べてみるとうさぎの骨格筋(骨に付いている体を動かすための筋肉)は体重の50%あるのに対し、骨は体重のわずか8%しかありません。人間の骨は体重の15~18%でネコは13%と言われているので、体重に対する骨の重さが軽いことがわかります。

参照:骨の病気と事故の予防とケア | 清水動物病院骨はだんだん弱くなる…。 | 医療生協さいたま

ではなぜうさぎの骨は軽くできているのでしょうか。動物は環境に適応して進化できたものだけが生き残ります。様々に進化を遂げ、すみわけをしてバランスをとりながら生き延びているのですね。だから私はうさぎの骨が軽くできている合理的理由があるはずだと思います。そこで私なりにその理由を考えてみました。

実はうさぎよりも体重に対する骨の重量が軽い動物がいます。それは鳥です。鳥は空を飛ぶために徹底的に身体を軽量化する方向へ進化をしました。じゃあうさぎは?空を飛ばないのに軽くする必要はあったのでしょうか。

調べても見つからなかったので、私の勝手な考えを述べます。うさぎは捕食される動物です。骨格の構造から、インパラなどのような草食動物のような走り方ができません。ピョンピョン飛んで移動しますね。

そういう骨格の構造から、筋肉に対して極限まで骨量を減らすことで体を軽くして飛び跳ねる力を獲得したのではないかと思います。本気で逃げる時は命がけ。食うか食われるかです。インパラのような群れで生活していないので、瞬発力もインパラ以上に必要なのかもしれません。

上記の理由は私が考えたものですが、骨が弱い理由はともかく、うさぎの骨に対して筋力、特に後ろ足の筋力が非常に強いために、うさぎ自身の足の力で骨折したり脱臼したりしてしまうのです。

うさぎの骨折・脱臼の原因と予防

うさぎはどのような原因で骨折・脱臼することが多いのか、まずは身体のどの部位の骨折が多いのか、飼い主がとるべき予防策について見てみましょう。骨折理由、骨折部位や動物病院での処置・治療法については、近畿地区の獣医師学会で発表された「ウサギの骨折 160 例の発生状況と治療に関する考察」を参考にしました。

うさぎの骨折の原因

うさぎの骨折で最も多いと思われるのが、高い所からの落下です。抱っこしているときにうさぎが暴れて落下したり、高さのある台の上からの飛び降りなどで、骨折するケースです。

その他多いのは、何かに驚いてパニックになり暴走して骨折、踏みつけ事故による骨折、家具などに挟まれて骨折などがあるようです。上記参考文献によれば、人が関与する骨折は骨折全体の60%を占めるとのこと、驚きです。骨折を防止するため、人間の側でうさぎとの接し方について気をつけるべき点・改善点があるかどうか、要チェックですね。

うさぎの骨折が多い部位

うさぎの骨折が見られる部位は、参考文献によると多い順から椎骨<ついこつ>(25.5%)、脛腓骨<けいひこつ>(18.8%)、大腿骨(13.3%)、橈尺骨<とうしゃくこつ> (10.3%)になります。これらを合わせると骨折の67.9%、約7割を占めています。

これらの骨の位置がどこにあるのか、次のイラストで見てみましょう。

出典:『うさぎと暮らす式 マッサージ大辞典』26-27頁 監修 越久田活子 図解イラスト 赤崎晴樹 マガジンランド

このイラストは、監修 越久田活子 図解イラスト 赤崎晴樹『うさぎと暮らす式 マッサージ大辞典』(マガジンランド)26頁にあるものを使わせていただきました。骨に番号が振っていて別ページで骨の名称を掲載していますが、必要部分だけ見やすくするために、私が別ページを参照して骨折が多い部分の骨の名称を書き入れました。

椎骨とは脊柱(背骨)を構成する骨であり、頸椎(首の骨)から始まり尾椎(しっぽの骨)までのことを言います。脛腓骨は後ろ足の骨で大腿骨の次、足先へつながる骨です。腓骨は細く、脛骨に沿うようにして存在します。大腿骨は太ももの骨ですね。橈尺骨は前足の骨です。橈尺骨は上腕骨の次に続く骨で、人間の手首あたりに該当する手根骨へつながります。橈尺骨も後ろ足にある脛腓骨と同様、細い尺骨が橈骨に沿うように存在します。

このイラストを見ると、背骨や手足の骨折が多いということがわかります。落下や驚いてパニックになり暴れることなどが多いので、納得できるデータだと感じました。うさぎは足の力がとても強いので、足や腰の骨の骨折や脱臼には気をつけたいですね。

うさぎの脱臼の原因と脱臼しやすい部位

うさぎが脱臼する原因は骨折とほぼ同じで、高い場所からの落下・パニックになって暴れたとき・踏みつけ・挟まりなどです。脱臼とは関節が外れることですが、関節の中でも特に脱臼しやすい部位は肘・膝・股関節が多いらしいです。すのこなどの小さな隙間に指が挟まったために、指の関節が脱臼することもあるようです。

うさぎの脱臼は治療が難しいと言われています。はずれた関節をはめても、再び同じ場所が脱臼することが多く、何も処置しないという選択をするケースもあるようです。その場合、痛みや足の自由が利かなくなることでQOL(生活の質)が低下する可能性が高いため、その都度対処することが求められます。

治療の実際については、後程骨折と併せて紹介します。

飼い主ができる骨折・脱臼の予防

うさぎの骨折・脱臼は、落下・飛び降り・パニックによる暴走・踏みつけ・挟まりなどがよくある原因です。これらを防ぐための策を講じることで、大切な家族に痛い思いをさせないように心がけましょう。以下に予防法の一例を挙げますので、各ご家庭の環境に応じて必要な予防策を講じましょう。

  • 落下
  • 座って抱っこする。高い場所にうさぎを乗のせない、登らせない。

  • 飛び降り
  • ケージの上や家具の上など、高い所に登れないようにする。

  • パニックによる暴走
  • 広い場所に出すときは、足が滑らないような床材を敷く。暴れた時に腰部と後ろ足を抑える。落下したり衝突を防ぐ工夫をする。

  • 踏みつけ
  • 放し飼いはしない、または放すエリアや時間帯を限定する。

  • 挟まり
  • うさぎがいる場所に小さな隙間がないか確認する。特にすのこの隙間など、指が入るほどの隙間は危険なので見つけた時には隙間を埋めるか指が挟まらない対策を施す。

参考:ウサギの骨折 160 例の発生状況と治療に関する考察 | 日本産業動物獣医学会(近畿)

うさぎが骨折・脱臼!飼い主がすべきこと

まずはうさぎの様子がおかしいと思ったら、動物病院を受診することです。身体のどこに異常がありそうなのか、様子がおかしくなる前に何があったのかも踏まえて、ある程度原因と思われることを把握していると診察の助けになります。

骨折や脱臼の場所や程度により、かなりの痛みを伴っている可能性が高いので、その点を考慮して移動には気を使いましょう。

激しい痛みにより移動中に暴れる可能性があるので、必ずうさぎをキャリーに入れますが、キャリーの中には柔らかくクッション性のある布などを入れて、さらなる怪我を防ぎましょう。

うさぎの骨折・脱臼に対する動物病院での処置・治療法

うさぎが骨折・脱臼したときに、動物病院ではどのような処置・治療がなされているのでしょうか。気になるところですね。実際の治療から治癒までの情報を公開している動物病院のサイトを調査した結果をまとめてみました。

うさぎの骨折に対する処置・治療法

うさぎの骨折治療を難しくしている要因は、骨がもろいために手術が困難なこと、麻酔はハイリスクを伴うこと、骨折の治りが犬やネコよりも遅いことです。そのため、骨折しても症状や場所によっては痛み止めなどの内服薬だけを使い、その他は何もしない(自然治癒に任せる)という選択肢も存在します。

何もしない場合には、骨が綺麗にくっついて元の通りになる可能性は極めて低いですが、ごく小さな骨が折れた場合で特に生活に支障をきたさないと判断されるときには、何もしない選択をすることが多いでしょう。

腰椎は骨折が起こりやすい部分ですが、椎骨(いわゆる背骨)には脊髄が通っているために、骨折により脊髄が損傷した場合には、骨折が治癒しても後遺症として麻痺が残ることがあります。損傷部分により足や手が動かなくなるので、椎骨の怪我を避けるために細心の注意を払いたいですね。

では治療をする場合には、どんな方法があるかについて紹介します。

うさぎの骨折治療法

治療の方法には、大きく分けて患部を切開する方法と切開しない方法があります。前者は骨折している部分の皮膚を切り開き、骨の中にピンを入れたり直接骨にプレートを固定する方法です。後者は骨折している部分を切り開かずに外からピンを刺して固定する方法(創外固定)です。

どちらを選ぶかは骨折の状態や獣医師の判断によります。骨折部分を切り開いて骨を直接固定する場合、うさぎではピンを骨髄内に挿入するケースが多いようです。プレートで固定する方法もありますが、うさぎの骨のもろさゆえに使いづらいようです。調査した中では、プレートの一種で人間の骨粗鬆症にも使われるロッキングプレートを使って治療している例もありました。

以下は参照した動物病院のサイトです。

うさぎと骨折 | 浅香山動物病院
うさぎの後ろ足かかと骨折の治療の様子が書かれています。骨折した部分にピンを入れているW線写真があります。

ウサギの大腿骨骨折 ~創外固定法~ | オハナ動物病院
うさぎの大腿骨骨折を外側からピンを骨に刺すことで固定する、創外固定法での治療の記録です。

ウサギの脛骨骨折(創外固定) | ケーズペットクリニック
うさぎの左足の膝の下(脛骨)が骨折し、創外固定法で治療しています。X線写真とピンを刺している写真があります。

ウサギの脛骨骨折・創外固定手術 | もねペットクリニック
同じくうさぎの脛骨骨折です。外側からピンを刺して骨を固定する、創外固定法での治療の記録です。生々しい写真があるのでご注意を。

ウサギの骨折手術 | 川越市「マリー動物病院」の手術レポート
こちらもうさぎの脛骨骨折のですが、このケースは骨折患部を切り開き、骨の内部(骨髄)にピンを入れ、割れた骨を直接ワイヤーで固定した手術です。手術前と手術後、回復した様子を動画で見ることができます。

ウサギの骨折 | ヴァンケット動物病院のBLOG
この症例は他の病院でピンを入れる手術を受けたのですが、ピンが破綻して癒合不全(折れたところの骨がくっつかない状態)になっています。従来なら足の切断という方法が取られる可能性がありましたが、ロッキングプレートで上手くいった例です。

うさぎの脱臼に対する処置・治療法

脱臼も筋力の強いうさぎにはよくある怪我です。脱臼の治療法を紹介します。主に固定と手術の二つの治療が考えられます。

うさぎの脱臼治療法~固定

脱臼も骨折と同じく治すのが難しい怪我とされています。治療は関節を元の状態に戻してから、包帯などで固定する方法があります。しかし脱臼すると靭帯が切れているために、再び脱臼することが多いです。

脱臼にすぐに気が付かないことも多く、気づいた時には時間が経っていて、外れた関節のくぼんだところに結合組織(腱や皮下組織など、繊維質の成分を多く含んだ組織のこと)が入り込むために、外れた関節を元に戻しにくくなります。

うさぎの脱臼治療法~手術

脱臼したままの状態だと、正常に足が動かせないために歩行困難になる場合があります。これは関節部分の骨が丸くなった部分(骨頭部)が外れた骨に変に当たるために起きる症状です。

この様な場合には、骨頭部を切り取る手術を行います。うさぎの体重は軽いので、周辺の筋肉の力で骨が正常な位置に収まるようです。

骨折よりも脱臼の治療に関する情報が少なかったですが、以下は脱臼の治療法について、参照したサイトです。

ウサギの脱臼 | 浅香山動物病院
脱臼の治療法について、ほぼ全体像が語られていると思います。固定する方法と、どんな場合に手術するか、脱臼の治りにくさなどがわかります。脱臼のX線写真あり。

うさぎの股関節脱臼 | 垂水オアシス動物病院
股関節を脱臼してから1か月後の手術の様子が記されています。脱臼のエックス線写真とうさぎが麻酔されている写真があります。

うさぎの肘の脱臼 | すいれん動物病院
うさぎの肘の脱臼です。ギブスによる固定で治癒した例です。

うさぎの特性を理解して骨折・脱臼を防ごう

うさぎは骨がもろく骨折・脱臼しやすい動物であること、骨折が治るまでに要する期間は犬やネコよりも長いこと、椎骨の骨折により脊髄損傷すると後遺症が残ってしまうこと、一度脱臼してしまうと再脱臼することが多いことについて、説明しました。

うさぎの怖がりな性質や骨に対する筋力の強さを十分理解し、事故のないように飼い主として細心の注意を払いたいですね!今回治療にかかる費用については触れませんでしたが、手術となると費用もかかるし治癒までの期間が長いために通院費もそれなりにかかるでしょう。

ひと昔に比べると、うさぎの飼育環境が良くなってきた分、長寿うさぎも増えてきました。それに比例して、病気や怪我で病院へ行くケースも増えています...

何よりも骨折や脱臼によって一時期でも身体が思うように動かなくなるのは、うさぎにとっては大きなストレスです。飼い主もうさぎが元気を回復するまで気が休まりませんよね。これらのことを忘れずに、大切なうさぎを守りましょう。

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