爪切りは、自宅でできるうさぎのケアの1つですが、苦手とする飼い主さんは多いですね。私もなのはっちが元気だったころは爪切りが苦手で、一人ではできなくていつも二人がかりでした。ちょっと苦手とする方のために、何通りかの爪切りの仕方をご紹介します。方法はひとつではありません。飼い主とうさぎに合った方法が、きっと見つかると思います! 無理せず、「これならできそう」と思うことから始めましょう。
「爪切りは怖くない」と思うことから始めよう
爪切りが怖いと思う理由を考えてみました。
1.抱っこでじっとしてくれない
2.深爪をしそう(血が出たり、痛がるのがいや)
他にもあるかもしれませんが、多いのはこの辺りでしょうか。
爪切りの必要性
野生のうさぎは爪きりをしなくても、穴を掘ったり走り回ったりすることで爪が自然に削れるので、伸びすぎることはないかもしれませんが、飼いうさぎはそうはいきません。ケージ内で生活している限り、爪が自然に削れることはないでしょう。だからどんどん伸びていきます。
伸びると何がいけないかというと、ケージの床(すのこや金網やプラマット)に爪が引っかかってしまい、怪我をすることがあります。実際、なのはっちは前肢の指の一本がおかしな曲がり方をしたままでした。おそらく爪が伸びすぎで怪我をしたと思われます。まだなのはっちが元気なころ、爪切りに手を焼いていて、数ヶ月爪を切らずにいたことがありました。おそらくその頃に怪我をしたのだと思います。
爪が伸びすぎて爪が折れてしまうこともあるでしょうし、歩きにくさからソアホックになる可能性もあるでしょう。また飼い主を引っかいたときには、爪が長いとかなり痛い思いをしなくてはなりません。爪は放置すればするほどきりにくくなると思うので、苦手な方は早いうちに「これならできる」という爪切りの方法を見つけましょう。
怖さを克服するために必要なこと
まずは知ることです! うさぎの爪はどうなっているのか、安全に爪を切る場所、保定の仕方、血が出たときの対処法など、爪を切るために必要な事柄を知っていれば、いくらか恐怖心は薄らぐと思います。後は経験を積むのみです! ではこれらのことを、できるだけ丁寧に説明していきます。
うさぎの爪きり 知っておくべきこと
うさぎの爪はどうなっていて、どこまで切るのか
上図はうさぎの爪です。赤いところが血管です。爪がこのように白っぽいうさぎの場合、血管がうっすら赤くなっているのでわかりやすいです。人間の爪も同じで、ピンクのところを切ると痛く、出血します。
爪が黒っぽいうさぎの血管は見えにくいです。なのはっちは白っぽかったので、その点は楽でした。爪が黒くて見えにくい場合には、爪にライトを当てると見えやすいらしいです。
爪の中の血管が見えたら、そこから数ミリ離れたところを図のようにまっすぐにカットします。あまり血管の際ギリギリまで切ると痛がると思いますし、目視できないほどの毛細血管があると、少し出血する可能性もあるので、血管から少し離れたところをカットしましょう。
ところでうさぎの爪は前後の肢を合わせていくつあるかご存知でしょうか。下図のように前肢5つずつ、後ろ足4つずつの計18あります。前肢の爪の1つが少し離れたところにあるので、切り忘れのないようにしましょう。
毛が邪魔になって切りにくいとき
うさぎの爪を切るときに、結構わずらわしく思うのが毛に覆われた指から爪だけを出すことです。毛をよけなければ爪の中の血管が見えないし、切る部分も見えない。そうこうするうちにうさぎが嫌がって暴れだす、ということはよくあることです。そこでとても簡単な方法をご紹介します。
うさぎの爪を切る手足をネットの中に入れます。すると毛はネットに引っかかって出てきませんが、固い爪はネットの間から出てきます。うさぎが嫌がるかもしれないので、切る手や足だけを入れると良いですね。ネットは洗濯用ネットがやわらかくてよいかもしれません。その他、爪が出るぐらいの荒さのネットならば使えると思います。
出血したときの対処法
圧迫止血 押さえて止血
爪を切りすぎて出血した場合には、清潔な脱脂綿などで傷口を押さえましょう。私達が怪我をして止血するときと同じです。ただうさぎは骨が折れやすいので、力いっぱい押さえないように気をつけてください。そこそこの力で止血しましょう。破れた血管を適度な圧で押さえている間に、傷口に血小板が集まり、血を止めてくれます。15分もすれば大概の出血は止まるようです。
血が止まりにくいときには、必ず動物病院を受診しましょう。
動物用止血剤
私個人としては、あまりおすすめしたくないのですが、動物用の止血剤があります。市販品なので、お店やインターネット販売で簡単に手に入ります。「クイックストップ」という商品名で、主要成分は塩基性硫酸第二鉄です。止血効果は抜群で、直ちに止血できるらしいのですが、その止血作用を知ると積極的には使いたくなくなります。
クイックストップ なぜ直ちに血が止まるのか
クイックストップに含まれている「塩基性硫酸第二鉄」という成分はもともと、工業分野で排水処理剤として使われています。医療分野では、動物用の止血剤として広く使用されています。この塩基性硫酸第二鉄という薬剤が、どのように作用して血を止めるかご存知でしょうか。
クイックストップに含まれている塩基性硫酸第二鉄が、出血した部分の細胞組織の水分を奪う事によって、細胞組織が萎縮します。細胞組織が萎縮することで、破れた血管の穴も小さくなります。同時に血液中の水分を奪うことにより血小板*濃度を上げて、傷口を速く塞ぎ止血するのです。数秒で組織が萎縮して血管を塞いでくれるので、直ちに血が止まるというわけです。
血小板*:血小板(けっしょうばん)とは血液中に存在し、出血したときに傷口周りに集まり、凝集することで傷口にフタをして止血する働きがあります。
塩基性硫酸第二鉄を止血剤として使うことに対する私の見解
組織が萎縮するとき、うさぎは痛みを伴っているのかはわかりませんが、クイックストップを自分(人間)で試した人は激痛だったとのこと。だからといって、当然のようにうさぎも同じ痛みを感じるかはわかりません。
大量出血して、傷口を押さえていてもどんどん血が出てきて、このままでは失血死してしまうという場合には非常に優れた薬剤だと思いますが、10分15分押さえたら必ず止まるような出血には、私はあえて使わなくてもよいのではないかと考えています。
昔、四肢切断などで大量出血した際に、速やかに止血する方法として傷口を焼コテで焼くという焼灼止血法(しょうしゃくしけつほう)を行っていた時代があります。これはタンパク質の熱凝固作用を利用したものですが、それに似ています。今でも家畜などに対して行っていることもあるようですが、クイックストップが動物用ということもあり、ちょっとその辺の考え方に対して抵抗があるというのが正直な気持ちです。
ここに書いたことは私の見解にすぎないので、これだけにとらわれず、さまざまな情報を得て飼い主自身が判断すればよいと思います。
爪きり用のハサミ
動物用の爪きりであれば基本的にどれでもいいと思うのですが、私の経験から、切れ味の悪い爪きりは切るときに爪が曲がったり、振動でうさぎが怖がって暴れるので、切れ味のよい爪きりがおすすめです。通販で購入する際には、レビューを参考にするとよいと思います。
持ち手がハサミと同じようなものと、持ち手がニッパのようなものとありますが、これは好みで選んでいいと思います。私はハサミのような持ち手のほうが、慣れているので持ちやすく、爪切りもしやすかったです。初めて買った爪きりは、ニッパのような持ち手に歯がギロチンタイプのものでしたが、刃の形も持ち手の形も慣れないためにとても切りにくく、その上切れ味が悪かったので、爪きりは苦手でした。
けれども飼い主が扱いやすい形、切れ味の良い爪きりを使うようになってからは、自分で爪きりができるようになりました。
そんな経験から、爪きりが上手くいかなかったとしても自分には無理だとあきらめず、使いやすい爪きりを見つけてみるのがよいかもしれません。下にいくつか、爪切り画像を載せておきます。
保定の仕方
一人でする場合には、ひざの上にうさぎを上向きに寝かせるか、下向きで腹ばいにします。なのはっちは寝たきりでさほど動かなかったので、仰向けで腕と脇腹の間で固定して切っていました。苦手だったときは、二人がかりで爪を切っていました。一人がうさぎを持ち、一人が爪を切ります。
一人でするときは、うさぎをひざの上にうつぶせにして、片方の腕と脇腹あたりでうさぎの腰あたりを押さえつつ爪を切るのがおすすめです。また、うさぎは仰向けにすると少しの間だけですが、おとなしくなります。おとなしくなったところで頭の部分をそうっと固定して、大丈夫なら爪を切り始めます。けれども急に動いたりすると飼い主もびっくりして危険なので、始めは二人がかりがおすすめです。
写真はちょっと保定が上手くないですね(笑)。爪を切るときは大きな後ろ足キックができないように、写真よりももう少し腰から後ろ足あたりをしっかり押さえておく必要があります。うさキックは、場合によってはうさぎ自身が脱臼したり骨折したりするので要注意です。私はうさぎの骨盤あたりを片方の手でぐっとつかんで、腰に安定感を与えるようにしていました。こうするとキックはあまりしませんでした。
どうしてもダメなときは
どうしても家で爪が切れないときは、動物病院で切ってもらいましょう。 1-2ヶ月に1回程度でよいと思います。うさぎの爪切りの様子を見ると、うさぎの扱いに慣れているかがある程度わかると思いますので、病気になったときのために、うさぎが診れる病院探しの目的で、爪きりで受診してみるのもよいでしょう。