いろいろな野菜や野草などを食べさせてあげたい、でもこの野菜はあげてもいいのかな?の疑問を解消!知らずにあげた食物がうさぎの身体に害を及ぼすことのないように、うさぎにあげてもよい植物、悪い植物をできる限り紹介します。なぞに包まれた食糞のことも詳しく説明します。
さらに飼い主があげてもよい食物かどうかを一つ一つ調べなくてもいいように、ある程度は自分で判断できるようになるための情報もまとめたいと思います。
絶対に与えてはいけない食物
人間用に加工した食べ物
人間用に加工した食べ物は、うさぎには与えないようにしましょう。人間用に加工した食べ物とは、たとえばチョコレート、パン、クッキーなどです。理由はさまざまです。中毒を起こしたり、消化できない原料や摂取過剰になり健康を害することがあるからです。
うさぎ用のおやつでも、クッキーや砂糖がたくさんついたドライフルーツの類は与えないほうがよいでしょう。クッキーやパンに使われる小麦粉には、でんぷんが含まれています。野生のうさぎが食べないでんぷんや砂糖を多く摂取すると、腸内細菌のバランスが崩れ、健康を害する恐れがあります。
ねぎ類
たまねぎ中毒で知られています。人やサルの場合、過剰摂取でなく低用量であればたまねぎ中毒にはなりませんが、うさぎ、犬、猫などは低用量でも中毒を起こすので注意しましょう。
原因物質はタマネギ、ニンニク、ニラなどのネギ属に含まれるアリルプロピルジスルファイド*など(その他、二硫化アリルなど)です。アリルプロピルジスルファイドなどがヘモグロビンを酸化させることにより、溶血性貧血を起こします。
*アリルプロピルジスルファイド:化学式C6H12S2で表される有機硫黄化合物。
詳しくはウィキペディア たまねぎ中毒を参照ください。
自然毒
野菜、野草、果実には、人間を含む動物に対して有害な影響を与える毒素が含まれていることがあります。人には無害でも動物に有害なものもありますので、注意しましょう。ここでは絶対にあげてはいけないものを紹介します。少量なら摂取してよいものは、「与える量に注意が必要な食物」の中で紹介します。
身近にある うさぎにとって危険な食べ物
野菜や野草などには食すると有害な成分(毒素)が含まれている場合があります。考え方として、まずは人間にとって有害なものはうさぎには与えないことです。たとえばじゃかいもの芽などに含まれるソラニンなどです。次に与えたことのない野菜や野草などを始めて与える前には、必ず調べるようにしてください。たくさんあって書ききれませんので、下記リンク集を参照してください。
意外と知られていないかもしれない、動物に与えてはいけない野菜を1つ、紹介します。
アボカドにはペルシンという殺菌作用のある毒素が含まれており、人以外は有害と言われています。胃腸刺激、嘔吐、下痢、呼吸困難、うっ血などの症状が認められ、心臓組織周辺の体液貯留から死に至ることもあるそうです。
詳しくはウィキペディア ペルシンを参照ください。
絶対にあげてはいけない植物リストリンク集
子供は特に注意!食べると「毒」になってしまう身近な食べ物
身体の小さな子どもが食べると危険な自然毒は、小動物も同じと考えましょう。果実の種に要注意! チェリーの種、りんごの種、桃の種、トマトの葉、なすの実以外全部、じゃがいもの芽と青い皮、ふきなど、身近な食材に存在する毒成分が載っています。
上のリンクは人間が普段食べている野菜ではなく、道端に生えている植物と考えてください。うさぎを外に連れ出すことがあるときには、自然に生えている草花に注意してあげてください。シャクナゲ、アジサイ、オシロイバナ、チューリップ、ポインセチア、アサガオなど、どこにでもある草花のどの部位にどんな毒が存在するのか、中毒症状が載っています。
知っておきたい毒性のある植物
庭に植えられている植物や道端に生えている植物で、毒性のある植物が載っています。毒物の名前や触ったり食べたときの症状が書かれているので、参考になります。
有毒植物リスト
このリストはリクガメなど爬虫類にとっての毒草をまとめたものですが、うさぎにとっても危険といわれている草と多く共通しているので参考にしてください。このリンクページに書かれているように、何が毒であるかの線引きは単純ではありません。薬にもなれば毒にもなることがあるからです。そのような考え方を持つことも大事ですね。
与える量に注意が必要な食物
炭水化物・糖質(でんぷん・砂糖など)
でんぷんや砂糖の取りすぎは、うさぎの消化管に悪影響を及ぼします。これらは腸内で異常発酵し、うさぎの腸内環境を壊します。そうなると善玉菌が少なくなり、悪玉菌が増え始め、その結果深刻な消化管の病気に至ります。
炭水化物の多い食物は、穀物類、マメ科植物、根野菜などです。根野菜ではありませんが、かぼちゃやブロッコリーやカリフラワーなどの花にも炭水化物が多いです。果物には糖類が多く含まれているので、過剰摂取せず少量だけ与えましょう。干しぶどうは炭水化物が多いので、あげすぎに注意しましょう。
シュウ酸
シュウ酸は私達が口にしたとき「アク」としてエグみを感じる物質です。口の中がチクチクしたりしますよね。アレです。パセリ、カラシナ、ほうれん草は比較的含有レベルが高いです。
大量のシュウ酸を摂取すると、皮膚や口にチクチクする痛みや、腎臓へダメージを与えると言われています。けれどもこれらの野菜を悪いものとして捉える必要はなく、栄養価が高いので適正な量の摂取を守れば問題はありません。
うさぎだけではなく、人間も同じで大量摂取は避けなければなりません。人間で取りすぎといわれる量は、1Kgの生のほうれん草を一度に食べるというレベルです。うさぎの場合は1Kgよりももっともっと少ない量で健康を害すレベルになりますが、毎日シュウ酸含有量の多い野菜ばかり大量に与え続けるのでなければ、心配はいらないと思います。
カルシウム
うさぎは他の動物たちとは違ったカルシウム代謝*を行っています。カルシウムの尿中排泄率は多くの哺乳類では2%以下であるのに対して、うさぎの場合は45-60%もあります。カルシウム含量の多い食物をうさぎに与えると、カルシウムの尿中排泄量はそれに比例して増加するので注意が必要です。
*うさぎのカルシウム代謝:うさぎは他の哺乳類と違い、消化管でのカルシウム吸収はビタミンDに依存することなく、すみやかに吸収されます。そのためカルシウムをたくさん摂取すると、それだけ多くのカルシウムが尿中に排泄されるしくみです。
かといって、うさぎにカルシウムが必要ないわけではありません。うさぎは一生歯が伸び続ける動物です。歯を作るのにもカルシウムが必要なので、毎日必要なカルシウムは摂取しなくてはなりません。牧草にはカルシウムが含まれているので、牧草を十分に食べている限りは心配は要らないでしょう。けれども牧草を食べないうさぎには、カルシウム不足のことを気にかけてあげる必要がありそうですね。
尿中のカルシウム量が多いと、何が悪いのか
尿中のカルシウム量が多いと、尿路結石や高カルシウム尿症になる危険性が高まります。尿路結石になると、元気消失・食欲不振・体重減少・嗜眠傾向・血尿・無尿・排尿時の力み(排尿困難)・背弯姿勢・歯ぎしり・会陰部の尿やけなどの症状が現れます。高カルシウム尿症は濁ったクリーム色の尿をしています。おしっこの色でわかるので、毎日の観察が大事ですね。
カルシウムについては、尿路結石/高カルシウム尿症 | すすきの動物病院ホームページのページを参照しました。
カルシウムを多く含む野菜は、パセリ・モロヘイヤ・大根(葉)・かぶ(葉)・バジル・しそ ・小松菜などです。
うさぎのカルシウム代謝について、より詳しい記事を書きました。↓
2017.10追記
水分の多いもの
水分の多い野菜は、与える量に注意しましょう。水を取りすぎると下痢をします。お水をたくさん飲むうさぎには、水分の多い野菜は与えないほうがよいでしょう。
野菜は他にもいろいろありますし、水分ばかりの野菜をあえて選んで与える必要性はありません。特に吸水ボトルなどから水が飲めないうさぎや、病気や衰弱などで水分を取らなくてはならない状態のうさぎに対しては、水分が多い野菜は心強い味方です。
水分の多い野菜の中でうさぎに与えることができる野菜は、レタス、きゅうり、白菜、チンゲン菜、トマトなどです。しかし普段水をしっかり飲めているうさぎであれば、あえて与える野菜でもない気がします。
野菜に含まれる栄養素について調べたいときには、野菜ナビが参考になります。水分の多い野菜を知りたいときは主要野菜の中から水分の多いもの(多い順に表示)| 野菜ナビをチェックしてください。水分の他、うさぎに与えるときに気になる炭水化物、カルシウムの量もわかります。野菜100gあたりに何g含まれているかが、多い順に表示されるので便利です。
野草
自然に生えている野草こそ、うさぎに食べさせてあげたい気持ちになりますが、野草を採取するときにはいくつかの注意点があります。
まず採取しようとする野草の周りで、農薬が散布されていないか確認しましょう。田畑のあぜ道に生える野草は、都会の空き地に生える野草よりも良く見えますが、田畑付近は農薬がまかれている可能性が高いので注意しましょう。
葉ものは根菜よりも残留農薬が気になりますね。水で洗い流せるのなら、水でよく洗いましょう。しかし洗い流せたかどうかを確かめる術がないため、あえてそのような危険性をはらむ野草は与えなくてもよいのではないかと、私は思います。人間に害はないレベルでも、うさぎのような小動物も絶対安全であるとは言えません。
もう1つは毒草を見分けること。野草の中には毒素をもつものがあります。食べられる野草と似ている毒草もあり、間違って食べて死んでしまう事故が時々ニュースになりますね。下記リンクは有毒植物の見分け方についてです。参考にしてください。
与える量に注意が必要な食物のまとめ
あくまで与えすぎに注意というものであり、与えてはダメな食物ではありません。ここにあげた以外にも、毎日同じも野菜ばかり大量にあげているとよくないものはたくさんあると思います。身体によいものであっても、とりすぎると身体に悪影響を及ぼします。なんでも適量というのは、人間も同じですね。
特にうさぎは人間よりも身体が小さいにも関わらず、好きな食べ物はいくらでも食べますので、与えすぎに注意しましょう。
うさぎの食餌に対する考え方 英語のサイトから
Suggested Vegetables and Fruits for a Rabbit Diet(うさぎにおすすめできる野菜と果物)| House Rabbit Societyに、飼いうさぎの食餌に対する考え方が書かれいていました。その中から飼い主にとって重要かつ必要な情報を簡潔にまとめました。
野生のうさぎの食事内容を知ることは、飼いうさぎのための健康な食事を考える上で重要です。野生のうさぎの食事はバラエティに富んでいます。乾草や草、葉っぱのついた植物が食事のほとんどを占めていて、樹皮、柔らかい枝、芽、果物なども少し食べるようです。草には水分はもちろんのこと、ビタミン、ミネラル、多糖類、タンパク質などの栄養が含まれています。
草食動物がほとんど草しか食べていないのに筋肉質な身体をしているのは、セルラーゼという人間が持っていないセルロースを分解する酵素があるからです。正確には自分で持っているのではなく、消化管内に微生物を飼っていて、その微生物がセルロースを分解しています。この話はうさぎの健康な食生活を理解するために非常に重要なことなので、次の章で詳しく説明します。
うさぎの消化管に悪影響を及ぼす食物は、でんぷんや砂糖がたくさん含まれている食物で、これらはうさぎの腸内のpHを変化させ、腸内の環境を壊します。その結果、深刻な消化管の病気に至ります。うさぎの消化管に悪い食物は、穀物類とマメ科の植物です。でんぷんを含む根野菜や果物の過剰摂取も悪い影響を及ぼしますので、少量だけ与えましょう。
野生ではフルーツは高カロリーな食べ物であり、季節限定の食べ物なのです。フルーツはしつけなどのご褒美として使えます。また飼い主が手から直接うさぎに食べ物を与えてうさぎとの信頼関係を作るのに、フルーツはとてもよいでしょう。毎日のうさぎの食欲など、体調をチェックするためにも使えます。
ドライフルーツは新鮮なフルーツの3倍濃縮であることを覚えていてください。うさぎや多くの動物達は、高カロリー(でんぷんや糖類)な食べ物を好みます。それには理由があるのです。その理由とは、野生の動物達は今度はいつ食べ物を手に入れられるかわからない環境に生きているので、高カロリーの植物を摂取し脂肪などのエネルギー貯蔵をして、飢餓に備えるという防御機能を備えているからです。
植物が果実を実らせるのは一時期だけなので、動物達は急いでフルーツを食べてしまうのです。このことはうさぎは自ら高カロリーな食べ物に対する制限を設けていないということを意味します。フルーツのあげすぎは肥満や胃腸障害を引き起こすので、飼い主が与える量を制限しなければなりません。
以上のことは、英語のサイトHouse Rabbit Societyからのまとめですが、この他に食べてもよい野菜をグループ分けして書かれていました。引用してもよいのですが、日本ではなじみのない野菜も多くあげられていて、あまり参考にはならないと感じたので紹介しませんでした。ご興味のある方はSuggested Vegetables and Fruits for a Rabbit Diet(うさぎにおすすめできる野菜と果物)を参照ください。
うさぎがうんちを食べる(食糞の)理由 共生
うさぎは固いイネ科の草(チモシー、オーチャードグラス、イタリアンライグラスなど)を食べます。イネ科の草には他の草に比べて、セルロースが特に多く含まれています。人がセルロースを食べすぎると下痢をするのは、セルロースを消化できないからです。
草しか食べない草食動物は、なぜ筋肉質?
実はうさぎも消化酵素を持っていません。ではなぜ食べて消化できるのかというと、セルロースを分解してくれる微生物を盲腸内に住まわせているからです。これを「共生」といいます。身近な草食動物である牛も同じです。牛は複数ある胃の中に、セルロースを分解してくれる微生物を住まわせています。
ところで草食動物は草ばかり食べているのに、立派な筋肉を持っています。人間は牛肉や牛乳など、ウシが作り出す良質なタンパク質をいただいて生きています。うさぎも牛と同じく、草しか食べないのにとても立派な筋肉質な身体を持ち、メスは出産すると赤ちゃんにミルクを与えます。
筋肉やミルクを構成しているタンパク質は、いったいどこから来るのでしょうか。
セルロースを分解する秘密
細胞壁という言葉、聞いたことありますよね。中学校か高校の生物の授業で出てきたと思います。植物の細胞は動物細胞と違って、細胞壁に守られています。この細胞壁はいろんな成分で構成されています。その1つがセルロースです。他には多糖類やタンパク質などがあります。
うさぎなどの草食動物は、消化管内に住まわせている微生物にセルロースを分解してもらい、細胞壁を構成している成分を栄養素として消化吸収しています。
しかし微生物がセルロースを分解してくれても、あとは結腸を通って排泄されるだけです。それではせっかくセルロースを分解しても、栄養を体内に吸収することができません。
そこで排泄された糞を食べることにしたのです。食べた糞に入っている栄養素は、胃の中で消化可能な形に分解され、腸内で吸収されます。
うさぎの糞は2種類あって、普通のころころした糞と盲腸糞があります。うさぎが食べるのは盲腸糞です。
うさぎの食糞に対して、牛は胃の中に微生物を住まわせているので、「反芻」をしてセルロース分解後に胃で栄養素を消化し、小腸で吸収します。
盲腸糞の中身
セルロースは微生物によって分解されて、グルコースになります。グルコースとは糖(単糖)の1種です。その後腸内の微生物による発酵作用で、アミノ酸や脂肪酸やビタミンなどが作られます。
盲腸糞には、これらの栄養素が豊富に含まれていたのです。うさぎは盲腸糞を食べることで、身体を作るのに必要な栄養素を摂り入れています。食糞の大切さをご理解いただけたでしょうか?
また、腸内の微生物が死ぬと、菌体を構成しているタンパク質も栄養素として消化吸収しています。微生物の力は偉大ですね!
いかがでしょうか?うさぎの食糞の秘密、すごい仕組みですね!うさぎが何らかの身体の具合(足腰が悪いとか術後など)で、うまく食糞できないときには飼い主が補助して食べさせてあげましょう。
余談ですが、うさぎが食糞を食べ残すのは、栄養過多が理由のひとつとして考えられます。ペレット、補助食品、おやつ類を減らしてみて、様子を見てみましょう。牧草は減らさないでくださいね。
食糞に関しては、以下のサイトを参考にしてまとめました。
東邦大学理学部生物学科のサイト 「細胞壁のはなし」
「牛の栄養と健康」 日本獣医生命科学大学 獣医学部教授 新井敏郎氏
エキゾチックアニマルの栄養学 1.ウサギ