うさぎはなぜカルシウムを摂りすぎてはいけないのか

うさぎに食べ物を与える際に、カルシウムの摂りすぎに注意しなくてはいけません。カルシウムを摂りすぎると、尿結石になるからですね。ではなぜ、うさぎは他の動物に比べて摂取するカルシウム量に対して、こんなに神経質にならなくてはいけないのでしょう。この点を明らかにしていきます。

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うさぎとその他の哺乳類は腸内におけるカルシウム吸収の仕組みが違う

哺乳類は腸内でカルシウムを吸収します。この点はうさぎも同じですが、うさぎ以外の哺乳類はカルシウムを吸収するためにはビタミンDが必要なのに対し、うさぎは必要としません。

人間の場合、老いも若きもカルシウム不足を指摘されている昨今です。カルシウムの吸収率はそれほど高くないので、吸収率をUPさせたカルシウムサプリが売られていますし、インターネットで検索するとカルシウムの吸収率を上げる食べ物や吸収率を下げる食べ物の情報がたくさん見つかります。

うさぎ以外の哺乳類は食べた分だけのカルシウムが吸収されるのではないのです。ところがうさぎは食べた分だけカルシウムが腸内で吸収されるのです。つまりカルシウム含量の多い食べ物を食べると、食べた分だけのカルシウムが腸から吸収される仕組みになっているのです。

うさぎは体内に必要なカルシウム量の調節は腎臓で行う

腸から吸収したカルシウムは血中に入ります。そして必要なところで使われていきますが、過剰になったカルシウムはどうなるのでしょうか。

うさぎは必要ではない余ったカルシウムは、腎臓から尿としてシュウ酸カルシウムや炭酸カルシウムという物質になって排泄されます。うさぎのおしっこが乳白色になるときは、カルシウム摂取量が多いということです。

尿中にカルシウムが過剰に排泄されるとなぜ結石になるのか

うさぎの尿は通常アルカリ性(pH8ぐらい)ですが、尿中に排泄されるシュウ酸カルシウムや炭酸カルシウムは、アルカリ性では溶けずに泥状~砂状に沈殿します。この沈殿物が尿管、膀胱、尿道内等にとどまることで石になるか、石を形成せずに泥状のものが堆積していくことになります。

そして尿が出なくなったり、血尿や激痛のためにうずくまったりという尿結石の症状を呈するようになります。

うさぎの腸内のカルシウム吸収率が高い理由

ところでなぜうさぎは腸内のカルシウム吸収率が高いのでしょうか。これについてうさぎのカルシウム代謝に関して書かれた情報を探しました。うさぎに関するかなり突っ込んだ情報は、英語のサイトが圧倒的に多いので、今回も英語のサイトを参考に記事をまとめています。どれもずばりと答えになることを書いているものを見つけることができませんでしたが、その中でヒントになるような記述を見つけました。以下にその部分を抜粋します。

Rabbits can be mated as soon as they have given birth so they may be pregnant and lactating. A breeding female will need plenty of calcium for her continually growing teeth and the foetuses in her uterus as well as the babies she is feeding.

出典:https://www.harcourt-brown.co.uk/articles/free-food-for-rabbits/calcium-and-rabbit-food

日本語にするとだいたい次のような意味になります。分かりやすいように適宜言葉を補っています。
「うさぎは出産をするとすぐにまた交尾・妊娠が可能な動物であり、そのために妊娠中でも授乳していることがあります。メスを飼育するにあたり、伸び続ける歯のために必要なカルシウム以外に、時期によっては子宮内で育つ赤ちゃんの発育のためや、生まれた赤ちゃんへの授乳のためにもカルシウムの必要量が多くなります。」

つまりうさぎは繁殖力が旺盛で、繁殖には普段よりもカルシウムが必要であること、またうさぎは一生歯が伸び続ける動物であり、歯の形成にはカルシウムが必要であることから、腸内のカルシウム吸収率が他の哺乳類に比べて非常に高いのではないだろうかというのが私の考えです。

うさぎが尿結石になる要因

うさぎの尿結石は多いと思いますが、その要因はカルシウムの多い食生活に限らないことがわかりました。以下、整理して説明します。

カルシウム含有量の多い食事

まずはカルシウムの摂りすぎですね。これはもう誰もが納得されていることと思うので、簡単に書きます。

注意すべき点としては、結石を構成する物質の一つである「シュウ酸カルシウム」という物質名を見てわかるように、シュウ酸の摂りすぎもまた、結石の原因になります。あまり神経質になる必要はないと思いますが、知っているのと知らないのとでは大違いなので、知識として覚えておくとよいですね。

去勢

うさぎのオスは発情しているときや縄張りを誇示するときに、おしっこをまき散らす習性があります。飛びしっことか、スプレーなどと呼ばれています。メスのうさぎでもするということは聞いたことがありますが、多くはオスのうさぎです。

おしっこのしつけをしてもおさまらず、飼い主の悩みとしても上位を位置するほどです。対策としては去勢がすすめられています。去勢をすると「人間にとっての」迷惑行為はおさまるのですが、問題があります。

さきほど紹介した英語のサイトに、去勢が尿結石の原因になることがあると書いていました。その理由は次の通りです。

オスのおしっこを辺りにまき散らす行為により、おしっことともに排泄されたカルシウムもうまく体外に出されているというのです。もしもこのおしっこをまき散らす行為を去勢により無理やり辞めさせると、膀胱などに尿が長時間残ると結石を形成する機会が増えることになります。

このことは何かはっきりとした根拠に基づいたものであるかは不明ですが、うさぎの本能としてスプレー行為をするために、常におしっこをある程度貯めておく習性が備わっているとしたら、去勢でその習性までも消せる効果があるのならよいのですが、そうでないなら・・・という可能性も無きにしも非ず。

水を飲む量が少ない

カルシウムの摂取量だけに注目するのではなく、飲む水の量=尿量にも注目すべきです。水分摂取量が少ないと、それだけ濃い尿が出ます。カルシウムはシュウ酸カルシウムや炭酸カルシウムの沈殿物として排泄されるのであれば、尿量が少ないほどカルシウムの沈殿量は相対的に多くなります。その分、尿結石になるリスクも上がるはずです。

実際、野菜などに含まれるカルシウム量に神経質になって必要以上にカルシウムを制限するよりは、水分を摂るために野菜を食べさせるべきという趣旨のことを書いているブログ記事を見つけました。

普段から水をたくさん飲むうさぎなら心配ありませんが、水をあまり飲まないうさぎの場合には、ちょっと注意して水分摂取量を見ていたほうがよいと思います。どうしても飲んでくれない場合には、生野菜を適量食べさせるのがよさそうです。

うさぎにとってもカルシウムは必要な栄養素

骨は一度できてしまえばずっとあるものではなく、新しい骨と入れ替わっています。さらにうさぎは一生歯が伸び続ける動物ですが、歯を作るのにはカルシウムが必要です。したがってカルシウムはうさぎにとって必須の栄養素です。

カルシウムは骨や歯の形成に必要なだけではありません。神経の働き、筋肉の動き、血液凝固など、体の中のあらゆるところで必要とされている栄養素です。したがってうさぎにカルシウムを必要以上に制限すると、健康を損なうことになります。

うさぎにカルシウム含量の多い野菜を与えることについては、あまり神経質になりすぎる必要はありません。カルシウム含量の多い野菜だけを毎日大量に与えるというのは論外ですが、うさぎの主食であるチモシーをメインに与えていれば、少しくらいカルシウム含量の多い野菜を与えても気にすることはないということです。それよりもカルシウムの排泄を促すために、水分を十分に飲ませるようにすることに気を使う方がよいでしょう。

子うさぎのような成長盛りのうさぎや、妊娠中・授乳中のメスうさぎには、カルシウムが多めの食餌を与えましょう。アルファルファはチモシーの約6倍のカルシウムを含むので、おすすめです。逆に大人のうさぎで妊娠・授乳期ではないメスうさぎ、オスのうさぎにはアルファルファを与えることはカルシウムの問題だけではなく、高たんぱく・高カロリーなので与えないよにしましょう。

参考にしたサイト

今回、うさぎのカルシウム吸収と排泄に関する記事を書くにあたり、参考にさせていただいたサイト記事を紹介します。

Calcium and rabbit food

Rabbit calcium metabolism, “bladder sludge,” and urolithiasis

400年前のガラミ酒再興プロジェクト
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