寝たきりうさぎ 寿命とQOL

大好きな家族であるうさぎが寝たきりになってしまった!どうしよう!このまま死んでしまうの?まだまだ一緒にいたいよ!

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はじめに

うさぎが何らかの理由で寝たきりになったとき、飼い主は心配でたまらないでしょう。自分にできることは何か、すぐにでも誰かに教えて欲しいと思うだろうし、以前のような元気な姿になって欲しいと願うでしょう。

元気になって!と願う反面、こんな状態でいつまで生きられるのだろうかと、不安になると思います。「寝たきりになった私のうさぎはあとどれぐらい生きられるの?」という問いに対しては、答えられる人は誰もいないと思います。

これから先の寿命が長くても短くても、生きている時間をできるだけ苦痛なく、寂しい思いをせずに穏やかに過ごしてほしいものですね。そこで今回は、寝たきりになったときのうさぎのQOL(クオリティ・オブ・ライフ quality of life)とそのために飼い主がすべきこと、考えるべきことについて、私の考えと実践してきたことをまとめてみました。

食 生きることの要を維持する

寝たきりといっても、その程度はさまざまです。動けないけれど、食べものを口に持っていくと食べてくれたり、口元に食べ物を置いておくだけで自力で食べてくれたりする場合がありますが、まったく自分の意思では食べられない場合もあります。

まずはうさぎの状態を見て、何ができて何ができないのかをきちんと把握しましょう。

その上で、生きるために絶対必要な「食べること」ができるように考えていきましょう。何だったら食べられて、何だったら食べられないのか?どうすれば食べてくれるのか?いろいろ試しながら、うさぎの反応をみて、最善と思われる方法をみつけましょう。

私が経験した食事方法について、次にまとめます。

食べ物と水

いつもどおり食べられない!水が飲めない!というときに考えるべきことは、どうしたら食べられるのか、水が飲めるのかです。

何が原因でいつもどおりできないのかを、うさぎを観察したり病院で診察を受けたりして見当をつけましょう。一回で正解を見つける必要はないし、たとえ見つけたとしても容態は日々変わっていくので、今までできたことが今後できなくなっていくこともあるのです。うまくいかなくなったら、すぐに次の手を探るべきです。

今まで私が経験した食べ物の与え方と水のあげ方を、簡単ですが以下に記します。「そこをもう少し知りたい」という場合には、コメント欄でご質問いただけたらお返事させていただきます。

食べてもらうための食べ物の与え方

1.ペレットを水でふやかす(一口サイズの団子にしてあげると食べやすい)
2.いろんな牧草を試す(香り、味、硬さが違うもの)
3.いろんなペレットを試す(嗜好性が違うから反応が変わる)

2、3の詳細は下記リンク記事を参照ください。
毎日食べる物だから、安全・安心・経済的なものを選びたいですね。今回はうさぎにおすすめのペレット、牧草、サプリメントを紹介します。 うさ...

4.好きな匂いをつけてみる(食欲をそそるかもしれない)

上記リンク記事の中のサプリメントの項目にある「姫マツタケ」の癖のある匂いが、うさぎによっては食欲増強になるかも(なのはっちは好きでした)。

5.寝ているうさぎの口元に、ペレットや牧草を置いておく
6.手でペレットや牧草をあげる
7.強制給餌 → 強制給餌の仕方

7の詳細は下記リンク記事中食欲がないときの「強制給餌」の項目を参照ください。
うさぎが食べないときは、危険な状況にあることを認識しなければなりません。犬やネコと違い、うさぎは丸1日食べない状態は命の危機であることをぜひ...

水を飲んでくれないときの水の与え方

1.給水ボトルを口先あたりに固定する(ちょっと首を伸ばせば届く距離)
2.ペレットを水でふやかす
3.野菜やくだものをあげる
4.シリンジやスポイトで水を飲ませる

4の詳細は下記リンク記事中食欲がないときの「水分補給」の項目を参照ください。
うさぎが食べないときは、危険な状況にあることを認識しなければなりません。犬やネコと違い、うさぎは丸1日食べない状態は命の危機であることをぜひ...

住 清潔で楽な体勢で身体を守る

寝たきりになると、身体のあちこちが汚れます。それは自分で毛づくろい(グルーミング)ができないからです。それに加え、床ずれにも気をつけなくてはなりません。

うさぎをただ寝かせるだけではなく、痛そうな部位はないか、身体の汚れがそのままになっていないか、毎日抱っこして身体中をチェックしましょう。そうすることでうさぎの身体を清潔に保つことができ、床ずれの悪化を防ぎます。寝かせ方を変えられるような容態であれば、ちょこちょこ体勢を変えてあげるとよいと思います。

私が経験したグルーミングと床ずれケアについて、簡単にまとめます。

身体の汚れを落とす グルーミング

寝たきりになってはじめて、うさぎが常にどれだけ熱心に自分自身の毛づくろいをしていたかということがわかりました。

コームを使う

汚れが目立つのは目の周りとおしり周りです。柔らかい毛がもつれやすいのは内もも。口元も、思うように食べられないために食べたものがくっついてカピカピになっていることもあります。

汚れた部分を中心に、丁寧にブラッシングをしてあげましょう。私は日常的にコームを使っていました。このようなコームです。
動物用コーム

半身浴 又は ふき取り

頑固なおしり周りの汚れは、できるならぬる目のお湯で半身浴というか、後ろ足からおしりまでをお湯につけて、ゆっくり絡まった汚れをほぐしてあげます。なのはっちが寝たきりでもまだ元気だったときは、ときどき半身浴を楽しんでいました。気持ちよさそうな顔をしていましたよ。

体力がなくなってきてからは、半身浴はしなくなり、コームで汚れを落とすだけでした。汚れがひどいときは、水を含ませた脱脂綿などを使って、丁寧に汚れをふき取っていました。

わが家でのグルーミングの方法についての詳細は、下のリンク記事を参照してください。

うさぎは本来、自分で自分の毛づくろいをしますので、放っておくのが一番なのです。嫌がるのを無理にグルーミングすることが、うさぎのストレスになる...

床ずれケア

寝たきりになると、ネザーランドドワーフのような小型うさぎでも、わりと簡単に床ずれになってしまいます。

床ずれはほぼ避けられないものだから、悪化しないための方法を常に考えてあげることしかないと思います。床ずれを悪化させないために私が行ったことのうち、効果的だったと感じたことを下記にまとめます。

床ずれを悪化させないためにしたこと

自分の意思で身体を動かせないので、最低1日1回は抱っこして全身を撫でたりマッサージしたりして血行を促し、寝かせる体勢を変えられたら変えてみましょう。

なのはっちは斜頸で首の傾きのために、同じ方向でしか寝かせることができませんでした。そのためマットやクッションの素材をいろいろ検討しました。また自力での食事ができなくなってからは、1日6回ほどの食事タイムには必ず床ずれの状態を確認していました。

寝床が改善できると感じたら、すぐに実行してみます。そしてまた経過を観察して、必要に応じてまた変更したりの繰り返しでした。

床ずれ部分は一日に1-2回消毒をして、傷が悪化するのを防ぎましょう。私がなのはっちの皮膚消毒に使っていたのは、人間用の「イソジンきず薬」です。

動物病院で動物用の消毒薬をもらってもよいのですが、頻繁に動物病院へ行けない場合にはおすすめの方法です。「イソジンきず薬」を水で10倍希釈すると、動物に使うことができます。これはなのはっちが看てもらっていた動物病院の獣医師が教えてくれました。

「イソジン消毒薬」の使い方、保管方法についての詳細は、下のリンク記事の中の「グルーミングは1日1回」の項目を参照してください。

うさぎは本来、自分で自分の毛づくろいをしますので、放っておくのが一番なのです。嫌がるのを無理にグルーミングすることが、うさぎのストレスになる...

衣 グルーミングと保温で病気予防

「衣」と書きましたが、うさぎの毛を意味しています。うさぎは人間のように服を着ないので、寒さに対しては暖を取る対策が必要になりますね。特に老齢うさぎや寝たきりうさぎの体調管理には、保温は非常に大事です。

そこで体調管理・病気を予防するという観点から、グルーミングと保温についてまとめました。

グルーミング

グルーミングの方法については前の項ですでに書きましたが、グルーミングはうさぎが快適に暮らすためだけではなく、身体を清潔にすることで皮膚病や傷口からの細菌感染など、新たな病気にかからないようにするためでもあります。

身体がおしっこや水分で濡れたままの状態を放置していると、細菌が繁殖して皮膚に炎症を起こします。炎症部位は脱毛してしまいます。毛は身体を守る働きがあるので、脱毛するとうさぎの身体に余計な負担をかけてしまうことにもなります。

継続的にこすれる部位にも脱毛は見られます。寝たきりになると、ずっと寝床に接している部位がハゲてきます。すると床ずれもしやすくなってしまいます。たかが脱毛と思ってはいけません。

適度に皮膚に刺激を与えるグルーミングは皮膚の血行も良くし、皮膚や毛もきれいに保ちます。グルーミングの際に身体中を観察することもできるので、身体の異常にも気が付きやすくなり、早期発見につながります。

保温

2匹のグレーうさぎ

体温が低下すると、免疫力も低下するといわれています。身体の中の白血球という、免疫に関わる細胞は体温が低いとうまく働いてくれません。働きが悪いと、身体の中に入ってきた病原菌などと闘っても勝つことができないので、病気になってしまうのですね。

でも実は体温を適温に保つ重要性は、白血球のことだけではありません。

生きるためには食べることが必要ですよね。食べたら栄養を吸収して、身体を作ったり調子を整えてくれます。ところが食べても栄養の吸収が、あまりよくなかったらどうでしょうか?

食べたものを消化し、体内に吸収してエネルギーなどの必要なものに変換するために、体内では様々な酵素が働いています。この酵素は体温が低いと働きが悪くなるのです。

つまり全部をまとめて大きく言えば、体温が低いと生命活動がスムーズにできなくなるということになるのです。これは特に老齢うさぎや病気中のうさぎには深刻なことです。

夏でも身体が弱ったうさぎに対しては、保温をしてくださいと動物病院の獣医師にいわれたことがあります。身体が本来持つ免疫力、生きようとする力を支えるためにも、適度に保温できているかどうかについて、気遣ってあげたいですね。

健康体ならば、寒いと震えることで筋肉が熱を作り出してくれます。けれども老齢うさぎや病気中のうさぎには、負担が重過ぎます。エネルギーを余計に消費することのないような暮らしができるよう、飼い主としてできるかぎりのことをしてあげることが、うさぎのクオリティ・オブ・ライフの向上へとつながると思います。

うさぎが快適に暮らせるような保温の仕方については、下記リンク記事を参照してください。

うさぎの低温やけどやコードかじりの心配がない、安全で理想的なヒーターを紹介します。冬に限らず高齢うさぎや病気療養中のうさぎの保温におすすめで...
うさぎは夏の暑さには弱いけれど、冬の寒さには強い!って本当でしょうか。 自然界に暮らすうさぎが、雪の中を駆け回る姿が写った写真を見たこ...

飼い主のメンタル

私は意外と大事なのが、飼い主の精神面だと思っています。考えてみれば当たり前のことなのかもしれませんが、うさぎをお世話するのは飼い主です。その飼い主の気の持ちようは、必ず行動や態度に現れてくると思います。うさぎは飼い主の行動や態度から、何かを感じ取っているのだと思います。

たとえばツメ切りやグルーミングのとき、自信を持って飼い主がうさぎを扱うのと、自信がなくビクビク触るのとでは、うさぎの反応は明らかに変わると思います。

私がお世話した寝たきりになった「なのはっち」は、自分の身体が思い通りに動かせないと自覚した頃から、私に何をされても受け入れてくれるようになりました。寝たきりになるずっと以前には、斜頸でローリングが酷く、自力では立てないし食べたり飲んだりもできないし、じっとして寝ることすらできなかった時期がありました。強制給餌に応じるようになって以降はシリンジを口の奥深くにつっこまれても抵抗せず、受け入れてふやかしたペレットを飲んでくれました。

元気だった頃は気まぐれで私に近づくことはあっても、抱っこが大嫌いで引っかかれたり蹴られたりしたものでした。けれども身体が悪くなってからは、そんな昔から想像できないほどに、私となのはっちはまるで一心同体でした。なのはっちの食事時、次に牧草のどの辺が食べたいのか、ペレットが食べたいのかまで、わかるような気になっていました。そんな気になっていただけかもしれません。けれども口先に持っていくとモグモグと食べてくれるのを見ると、本当に嬉しかったです。

将来を悲観して泣いてばかりいるよりも、共に今を一生懸命生きようと決意してうさぎに接したほうが、お互いにとって良い気がします。本当のところはわかりません。けれども少なくとも、飼い主の気持ちが落ち着くことにより、観察眼も鋭くなって些細な変化に気づいてあげることができます。結果として良い看護、介護ができるのではないでしょうか。

おわりに

手を舐めるうさぎ

マッサージが大好きだった

うさぎだけではなく、今まで一緒に暮らしてきた犬やネコその他の愛する動物達が寝たきりになるのは、本当に辛く悲しいことですね。ただ悲しんでいるわけにもいかず、今ここに生きている限りは精一杯のお世話をしなくてはならないし、今までの感謝を込めてお世話したいという気持ちでいっぱいのことと思います。

けれど実際の看護、介護は生易しいものではなく、昼も夜もなくお世話しなくてはならないし、私もそうでしたが、同じように動物の介護をされたかたは皆、寝不足と疲労でフラフラです。それでも愛する存在のために、できる限りのことをしています。

看護、介護がいつ終わるかなんて、誰にもわかりません。もしかすると数日で終わってしまうかもしれないし、なのはっちのように半年1年と続く可能性もあります。

だから飼い主の方々には無理はしないで欲しいと思います。無理をして飼い主が倒れてしまったら、誰がお世話するのでしょう。仮に変わりにお世話してくれる人がいたとしても、「あのとき・・・」という後悔が残るかもしれません。

無理なく介護。頼れるときには少しだけ人に頼る、頼もう。そんな気持ちで長期戦の構えでうさぎ達を見守ってあげてください。

最後に家族同然の動物たちの看護、介護をされている方々に、心から敬意を表したいと思います。最期までお世話できる幸せ・喜びは、経験した者だけが感じられるものでしょう。

私は最期の最期まで、なのはっちの介護にかかわることができたおかげで、なのはっちを失ったときの大きな悲しみの中でも、やりきった充実感を持つことができました。

2017年1月 なのはっちの3回忌を迎えました。

400年前のガラミ酒再興プロジェクト
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コメント

  1. ミツヤ より:

    我が家のウサギは8歳のおばあちゃんなのですが、殆ど寝たきりになってしまい水も思うように飲むことができません。家族がいるときはお皿に水を入れ顔に近づけて飲ませているのですが、誰もいない時の方法が思いつきません。何かいい方法があればアドバイスお願いします。(タオルに水をしみこますなど)

    • ayumi より:

      ミツヤさん、はじめまして。コメントありがとうございます。
      寝たきりということで、家族不在時のお水のあげ方についてお困りなのですね。8年という長い間、家族の一員として暮らしてきたうさぎですから、みんなが留守にする間気になることでしょう。
      今私が思いつく方法で、最も確実なのは、生野菜を入れておくことです。同じ野菜ばかりあげるよりは、数種類の野菜を口元へ置いてあげると、野菜を食べることによりいくらか水分は摂れると思います。もしもペレットをふやかしたものでも食べられるのであれば、ペレットに水をつけてふやかしたものを口元においてあげてもよいかもしれませんね。
      寝たきりなので長時間、誰も家にいらっしゃらないということはないという前提です。(野菜もペレットも時間が経つと水分が乾燥してしまいますから。)もしも丸一日、あるいは6時間か8時間以上家に誰もいないという状態が頻繁にあるのであれば、短時間でも預けられる信頼できる動物病院や、ペットシッターにお願いするのがよいかもしれません。大変なことなので、できれば避けたいところですよね。
      帰宅されたら様子を気をつけて観察されて、スポイトなどでお水を飲ませてあげるようにされてください。

      • ミツヤ より:

        アドバイスありがとうございます。野菜とペレットを試したいと思います。シッター等はお金がかかることなので難しいので。

        • ayumi より:

          ご家庭の事情もあると思うので、なかなか良い提案がむずかしく、ありきたりな回答になってしまいました。
          給水ボトルを使える子であれば、顔を向けるだけで飲める位置にボトルが固定できればそれが一番なんですが、それもケージ内の配置など、制約があるので難しいですね。
          帰宅されたらお水をあげることを習慣にされると、少しは安心できると思います。お大事になさってください。

  2. うえだ より:

    私も以前、自分の判断でイソジンを使用した事があったのですが、病院に行った際、イソジンはうさぎに良くないと獣医に言われました。

    • ayumi より:

      情報ありがとうございます。そのようなお考えの獣医さんもいらっしゃるのですね。
      我が家のなのはっちがお世話になった獣医さんは、うさぎの消毒にイソジンをすすめていました。また、他の動物病院へ行っても、やはりイソジンをすすめていました。
      イソジンの毒性を調べてみると、他の消毒液に比べると毒性は低いにも関わらず、殺菌作用が強いということで、安全性の高い消毒薬として病院でも推奨されています。
      イソジンうがい薬がありますが、うがい薬は粘膜に使用するため安全性の高い消毒薬でなければなりません。イソジンは粘膜に使用できるほど安全性が高いということです。
      うさぎの粘膜への使用は、自己判断ではすべきではないと思いますが、皮膚の消毒ならばイソジンが安全といえるでしょう。但し人間用はうさぎには濃度が高いので、薄めて使用しなくてはなりません。
      薄めて使用する場合には、雑菌の繁殖に注意してできれば数日で使いきれる量を、その都度調整すべきでしょう。また、自分で薄めたイソジン消毒薬は冷蔵庫保存することも必要です。イソジンを使うときの注意事項としては、毒性よりはむしろ衛生面(保存状態など)に気をつけたほうが良いと思います。
      もしも不安であれば、他の獣医さんに訪ねてみたりインターネットでも検索されると安心できると思います。